これはまだ、コトノオと彼女のツインソウルが、一つの体で暮らしていたころの物語。
時は紀元前。エーゲ海沿岸の小国で権力のある父親のもと、その少年は生まれました。彼にもまた、魂が割れていない人間特有の「無敵感」がありました。幼いころから、彼の心はいつも平静で、無秩序になるということはありませんでした。
少年は、母親、そして数人のお世話係の女性たちに囲まれて、成長していきます。彼は、自分の周りにいる女性たちをいつも観察していました。彼女たちは総じて、日々の小さな出来事に心を揺らしています。一日の中で喜怒哀楽がくるくると変わる彼女たちの様子を、彼は不思議そうに眺めていました。
いつも気持ちが安定し、彼女たちのように日々の出来事に心が乱されることがなかった彼は、人間のそうした感情の揺れ動きを理解することができなかったからです。
感情が乱れることなく、いつも落ち着いている彼の周りには、安らぎを求めた女性たちが集まってきました。
やがて青年になると、彼は父親からある仕事を任されます。それは、人を使いながら丸太の管理をするという単調な仕事でした。大きな海へ続く川に浮かんだ丸太を眺めながら、彼は思います。
「退屈だ……」
同じことが繰り返される仕事をこなす日々の中で、彼はいつも自分の力を持て余し、所在なげに過ごしていました。
そんな退屈な日々も、彼が20代になり戦場に駆り出されることで変化していきました。
当時のエーゲ海周辺では、小さな国がせめぎあい、まるで近隣の国の年中行事のように、長い間、戦いが繰り返されていました。
そうした奪い奪われ続ける戦いにおいても、彼は全くこわさを感じることはなく、戦いのさなかに起こる出来事が、まるで静止画のようにゆっくりに見えていました。
感情が高ぶることがなく、思考が感情に左右されない彼の頭脳は、戦いに大いに役立ちました。戦は、彼の持て余していた「無敵感」を存分に発揮できる格好の場となり、彼は人生で初めて全力を出しきる、という経験をすることになります。
体験記10につづく

この体験記は1章〜7章、全58,000文字で構成されています。
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